NEC PC8001mk2
NEC PC8001mk2 私の第1号機です。1980年代前半に市販されていたマシンです。

当時は今のように「パソコン(パーソナルコンピュータ)」とは呼ばずに「マイコン(マイクロ、或は、チョット洒落て、マイ(私の)コン(ピュータ))」と呼んでいました。当時のマイコン小僧は、自作プログラムを組んでは友人と発表交換をしたり、マイコン雑誌を買ってきては記載のプログラムリストを自分のマシンに打ちこんで(当時はディスク配布サービスやダウンロードサービス等は、その環境すら存在せず)、プログラムの解析や、自作実験を行っていました。ソフトウェアと言えば、今でこそアプリケーションソフトウェアを購入したりフリーソフトをダウンロードするのが一般的ですが、当時は、プログラムソフトは自作するものだというのが大前提でした。また、今のように、メーカ機種間でコンピュータのハードウェア及びソフトウェアの仕様が統一されておらず、各社の、いろいろな独自仕様の「マイコン」たちが、それぞれに適材適所で活躍していました。マイコンの製造メーカが違えば、入出力器機等の付替えもできず、当時、一般的であったBASIC言語にしても、大同小異、各社マチマチの言語仕様でした。当時、他には、日電の、PC-6001、PC-8801。シャープの、MZ-80シリーズ、MZ-1200、MZ-2000。東芝の、パソピア。富 士通のFM-7。松下の、JR-100。ソニーの、SMC-70。日立の、ベーシックマスター。 等のメーカ、機種等がありました。CPU種別で分けると、主に、ザイログ社Z80系と 、モトローラ社6809系がありました。

内蔵ROMにはMicrosoft社製N80-BASIC言語インタプリタやZ80マシン語モニタが書込まれています。ディップスイッチの切替え等で、下位互換性のある元祖PC8001搭載のN-BASICの起動も可能です。この辺りは当時、プログラム言語処理ソフトを格納するにはROMが良いかRAMが良いかという問題があり、ROMは本体メモリマップ上にインタプリタプログラムが存在するため起動時間が速く、電源投入後、すぐにBASIC言語が使用可能になると言う特徴があります。対するRAMは、電源を入れた時に、まず、プログラミング言語を動かすためのプログラム(インタプリタ自体等)をブートローダーを経て読み込まなくてはならない等で、使用可能な状態になるまでロード時間が掛かるが、そのメモリ領域は書き換え自由なので、BASIC言語インタプリタ自体のバージョンアップや、可能であれば、いかなるプログラム言語をも動かすことが可能という特徴があります。前者は当時のNEC系、後者は当時のSHARP系の機種が該当します。前者は、一般的なBASIC言語のインタプリタを搭載しており電源投入後、直ぐに使用可能、後者は言語ソフトを取替える事により、BASIC言語の処理系に加え、例えばFORTRAN等のプログラムをも、8Bitマシンで動かす事が可能でした。それを考えると、今時のWindowsパソコンは、拡張性はあるが起動時間がやたらと遅い(!?)という事の根源です。この辺りをフラッシュメモリを用いて半ば不揮発ROM化してしまったのが、WindowsCE等に続く昨今のモバイルマシンてな処でしょうか。

このマシンの拡張スロットには漢字ROMボードが載っています。実は、もう、この機種が下火になってしまった頃、アキバのショップで並んでいるのを見つけ「今のうちに入手しないと、それこそ、見つからなくなるぞ。」という訳で、通信端末プログラムを自作すれば漢字端末として使用できるかと思い、入手しておきました。しかし、いざ、実装して付属のデモソフトでテスト表示してみると、漢字文字の表示フォントデータを1ドットずつグラフィック画面に表示する様子が見える程の表示速度。これでは端末間の通信スピードに表示スピードが間に合わない。このマシンの場合、漢字表示は、漢字コードを指定するとテキスト画面に直接表示というのではなく、通常の文字を表示するテキスト画面とは別に存在するグラフィックス画面に、グラフィックスパターンデータとして漢字文字フォントが表示される訳で、1ドットずつ見える位に「遅い遅い」という結果でした。残念ながらそこで計画は断念してしまいました。しかし、このマシンでPC8001が2代目となり、このグラフィック画面の概念ができたお陰で、多少は目は荒くても画像ドットデータや漢字文字を表示させる事ができるようになりました。半角カナ文字は以前から使用できていましたが、漢字文字が表示できるようになり、当時のマイコンの日本語表示実用化へのひとつの軌跡となったと思います。因みに、拡張スロットにセットできる拡張ボードには、他に、増設RAMボードや、フロッピーディスク装置を接続させる為の拡張I/Oボード、拡張ボード自体を自作する為のバス配線と台枠だけの基本拡張ボード等がありました。

写真の左に並んでいるのが「外部記憶装置」です。規格は当時の一般的な音楽用と同じカセットテープレコーダです。これに、プログラムやデータを外部記憶させます。当時は今の様にハードディスク等はまだ無く、フロッピーディスク装置ですら業務用のそのまた超高級品で、この頃のマイコンユーザは皆、カセットテープで自作プログラムやデータをやり取りしていました。同様に、当時はマイコンショップに行くと市販プログラムのコーナーにはカセットテープがズラリと並んでおり、殆どがゲーム、ホビー用ソフトでした。本体には普通の音楽用テレコも接続できるのですが、何故か、録音レベル調整が合わなかった為か、「TAPE READ ERROR」が多発するので、やはり、専用のこちらの方が良いようでした。テープへの書込み、読みだしのスタート、ストップには、キーボードからの「SAVE」「LOAD」等の命令と共に、リモート端子による制御を用います。このリモート端子への信号をON/OFFすると本体内蔵のリレー回路が「カチャ…カチャ…」と切替わります。テープへの記録スピードは600bpsです。「k」や「M」bpsの単位でスピードを表現するのが一般的な今となっては苦笑してしまうスピードですが、当時は、パソコンのデータ記録専用テープとして10分や15分等のカセットテープがありました。もちろん、市販の一般的なオーディオカセットテープも使えるので最長の両面120分テープを使えば片面記憶容量270KB(!?)なんて数字が出てきますが、当時はどんなに頑張っても、本体のRAMの容量の方がはるかに少なかったので、実際は片面7分強の長さがあれば、どんなに長いプログラムでも収まってしまいました。勿論、圧縮などの工夫や処理能力の余力も無く、リアルタイム記録ですので書出し読込みにはそれなりの時間もかかります。記録されたテープを聞いてみると「ピージャラジャラジャラビービーガーガー」なんて具合です。丁度、昨今のFAXやモデムから漏れ聞こえてくる信号音を、もっともっと荒くしたような音です。デジタルの信号の1と0を音響信号の高音と低音に変換して記録します。処が、このカセットインタフェイス、素晴らしい応用ができます。確か1984年頃の電波新聞社刊「マイコン」誌に載っていたと思うのですが、この接続端子を、アマチュア無線の短波帯受信機に接続させ、PC8001をRTTY解読機にしてしまおう、というものです。当時、実際にマシン語ダンプリストを打込んで実験して見ましたが、確かに、あのピロピロピロ〜のRTTY信号を解読する事に成功できました。但し、私の打込みバグがあるようで、時々、暴走してしまうようです。当時は、マシン語入力時のサムチェックもわからない状態。しかも、残念ながら記載誌を紛失してしまいました。できれば今からでも再現させてみたいのですが、どなたか、この記事、今でも保存されている方いらっしゃいませんか。よろしかったら、ご連絡いただけないでしょうか。どの年月号に載っていたか、だけでもご連絡いただければ幸いです。

外部入出力関係は、文字表示最大80*25文字表示、8色表示可能。グラフィック表示640*200(モノクロ)、320*200(カラー)。BEEP音スピーカー単音鳴動。なんて具合です。しかも、一行のうち8色までしか表示色が変えられないというビデオ周りでした。しかも、当時は現在のようにパソコンの共通規格など無く、写真には写っていませんが、このマシン専用のカラーディスプレイに表示していました。

そう言えば、このマシンには「クモ隠れの術」!?と言うのがありました。画面に何かを表示しておいて、「カナロック」「ク」「モ」を同時に打ち込むと、なんと!!その名の通り、画面が消えてしまうんですね。キーボードマトリクスを追っかけていたのが懐かしい。

このマシンは、友人同士の所有マシン比較で、よく、音とグラフィックスの表現が貧弱だなぁ、と言われていました。しかし、ソフトウェア互換機種まで含めた普及率は、当時はダントツのトップでした。

このマシンの後継機種であるPC8001mk2SRでは、更に、FM音源機能が追加され、サウンド等の表現もBASIC言語を用いて簡単にできるようになりました(当時のメーカカタログによる)。

このマシンのお陰で、マイコンの面白さを体験でき、また、ソフトウェアプログラミングやハードウェアの勉強をする事ができました。まだまだ興味が尽きませんので、大事に動態保存しようと思います。

今となっては、当時のマイコンを取巻く様子や状況を伝える資料も少ないでしょうから、手持ちのソフトウェア・マニュアル、ハードウェア・マニュアル、その他の資料等を引っ張り出してきて、マシンの仕様や当時の思い出等を書いてみました。僅かでも当時のマイコン小僧の様子を伝える事ができたら幸いに思います。


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